解剖
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軽貨物の中抜きを解剖する。消費者が払った700円がドライバーに届くまでの全経路

荷主はドライバーに「200円の仕事」として発注する。だが荷主の上流では700円が動いている。差額540円を誰が取っているのか。軽貨物の中抜き構造を、上流から下流まで一本線で可視化する。

2026年5月29日

荷主から「1個200円」で仕事を受けた。

だが、消費者はその荷物の送料として700円を払っている。

差額の 540円は、どこへ消えたのか。


「中抜き」という言葉が問題を隠している

軽貨物業界で「中抜き」というとき、多くの記事はロイヤリティの話をする。「委託会社に月収の10〜15%払う仕組み」という解説だ。

それは正しい。だが、全体の一部しか見えていない。

本当の問題は、ロイヤリティの「率」ではなく、上流から下流までの連鎖全体でいくら消えているかだ。軽貨物の中抜きは1層ではない。EC大手・元請け・委託会社という3つの層が、それぞれ独自のマージンを取る構造になっている。

この記事では、消費者が払った送料が末端のドライバーに届くまでの全経路を、推計金額とともに追う。


第1層:EC大手が取る分

まずEC大手のポジションから整理する。

Amazonでの商品購入を例にとる。消費者は「送料無料」と表示されていても、物流コストは商品価格に転嫁されている。あるいはプライム会員費として年間費用に含まれている。いずれにせよ、消費者は実質的に 1配送あたり600〜800円 の物流コストを負担している。

Amazon自身が自社の配送コストを公表することはないが、FBA(フルフィルメントby Amazon)の出品者向け手数料から推計できる。標準サイズの商品1点あたりのFBA手数料は 500〜800円程度。これが荷主(出品者)からAmazonへの物流費支払いの目安だ。

Amazonはこの金額から自社の配送ネットワーク(人件費・倉庫・車両)のコストを回収しつつ、外部委託先に対して 200〜300円/個 相当を支払う構造になっている(推計値。Amazonは非公開)。

ここで第1層の取り分:400〜500円


第2層:元請け・委託会社が取る分

Amazonやヤマト・佐川といった元請けから、個人事業主ドライバーへの仕事は直接渡らない。間に「委託会社」が入る。

委託会社の役割は、元請けから仕事をまとめて受注し、複数のドライバーに振り分けることだ。この過程でロイヤリティが発生する。

相場は月収の 10〜15%。日当ベースで換算すると、1個あたり 20〜40円 が委託会社の手に渡る。

多重下請けの場合はさらに深い。元請けから2次業者、2次業者から3次業者、3次業者からドライバーという経路をたどると、各層で15〜20%が引かれる。

元請けが受け取る:250円
  ↓ 2次業者が15%取る(37円)
2次業者から3次業者へ:213円
  ↓ 3次業者が15%取る(32円)
3次業者からドライバーへ:181円
  ↓ 委託会社が10%取る(18円)
ドライバーが受け取る:163円

元請けが250円で受けた仕事が、ドライバーには163円で届く。 35%がなくなった。


第3層:ドライバー自身のコスト

ドライバーが163円を受け取って終わりではない。そこから経費を引く必要がある。

経費項目1個あたり換算(月100個×25日稼働)
ガソリン代約15〜20円
車両リース代約10〜15円
任意保険約5〜7円
車両メンテ約3〜5円
合計33〜47円

163円から経費47円を引くと、実質手取りは116〜130円になる。

消費者が払った700円のうち、ドライバーの手元に残るのは 116〜130円

割合にすると 17〜19% だ。


なぜこの構造が温存されるのか

「知らなければ異議を唱えられない」という情報の非対称性が最大の理由だ。

ドライバーは荷主が元請けにいくら払っているか知らない。元請けが委託会社にいくら払っているかも知らない。「1個163円の仕事」として届くため、163円が適正かどうか判断できない。

これは偶然の構造ではない。情報を開示しないことが、中間業者の利益を守る

2025年5月の法改正で「再委託2回以内」の努力義務が盛り込まれたが、強制力はない。構造は継続している。


中抜きを減らす唯一の手段

理屈は単純だ。中間の層を減らせば、ドライバーへの単価が上がる。

現実的な方法は2つある。

① Amazon DSPドライバーになる

Amazon配送サービスパートナー(DSP)のドライバーとして働く場合、元請けと委託会社の層がひとつ圧縮される。日当制(18,500〜29,000円固定)のため、1個あたり換算での中抜きが実質ゼロに近い。個人事業主として参入可能(元請けDSP会社として参入する場合は法人登記が必要)。

② 荷主と直接契約する

すべての中間層を飛ばして荷主と直接契約できれば、200〜350円/個の単価になる。中抜き後の163円との差は1個あたり37〜187円。月2,500個配れば月9〜47万円の収入増だ。

ただし直取引には営業力と信用実績が必要になる。最初の1社を獲得する具体的な手順は、別レポート(直取引移行の実践手順)で解説する。


この構造を知ることの意味

「だから軽貨物は稼げない」という結論を出したいわけではない。

構造を知れば、どこで何を変えれば収入が増えるかが見える。やみくもに配達個数を増やすのではなく、自分が今の経路のどの位置にいるかを把握することが出発点になる。

163円が適正かどうかは、700円の全体像を知ってはじめて判断できる。


本記事の金額はAmazon非公開データを含む推計値。実際の委託契約では契約内容により異なる。

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