「返却時に傷があった」と言われ、修理費30万円を請求された。
しかし入車時にその傷はすでにあった——でも証明できない。
リース車の返却トラブルの多くは、この「証明できない」状況を利用した請求だ。対策は単純だ。入車時の状態を証拠として残す。
なぜ返却時に請求が発生するのか
リース会社・委託会社にとって、車両の「原状回復費用」はドライバーへ転嫁できる費用項目だ。
通常の使用による摩耗(通常損耗)は借主の負担にならないが、「通常を超える損傷」があれば請求できる。問題は、「通常の範囲か否か」の判断が極めて主観的であり、記録がなければ委託会社側の主張が通りやすいことだ。
入車時に必ず実施する記録手順
基本原則:「動画 → 写真」の順で記録
動画はすべての角度を一筆書きで記録し、写真は傷・凹み・汚れの詳細を押さえる。
必要なもの
- スマートフォン(位置情報・タイムスタンプが記録されるカメラアプリ)
- 照明(車内撮影時)
- 黄色・赤のマーカーテープ(傷を目立たせる用途)
【外装】撮影チェックリスト
□ 正面(全体)
□ 後面(全体)
□ 左側面(全体)
□ 右側面(全体)
□ 左前ドア(アップ)
□ 右前ドア(アップ)
□ 左後ドア(アップ)
□ 右後ドア(アップ)
□ フロントバンパー
□ リアバンパー
□ ボンネット
□ ルーフ
□ ホイール4本
□ ナンバープレート(前後)
傷・凹みがある箇所は必ずアップで撮影し、コインや定規を置いてサイズを記録する。
【内装】撮影チェックリスト
□ 運転席シート(座面・背もたれ)
□ 助手席シート
□ 荷室床面(全体)
□ 荷室壁面(左右)
□ 荷室天井
□ ダッシュボード
□ ハンドル
□ メーター(走行距離を記録)
□ カーナビ・モニター
走行距離・メーターの記録
返却時の走行距離制限が設定されているリース契約の場合、入車時の走行距離を記録しておくことで、超過走行分を正確に把握できる。委託会社が主張する走行距離と食い違いが生じた場合の根拠になる。
記録の保管方法
撮影した写真・動画は、以下の方法で保管する。
- クラウドストレージへの自動バックアップ(Google Photos / iCloud)
- フォルダ名に日付と車両番号を記載(例:
2024-04-01_軽バン_品川〇〇〇〇) - 入車時に担当者への送付(「入車時の状態確認として共有します」とメールで送る)
担当者へのメール送付が最も有効だ。後から「傷があった」と主張された際に「入車時の写真を御社にも送付済みです」と即座に返答できる。
返却時のトラブル対応
新たな傷を主張された場合
- 「入車時の状態を確認してください」と伝え、入車時の写真を提示する
- 写真に写っていない傷であれば、在職中のどのタイミングで発生したか確認を求める
- 在職中の業務上の損傷であれば、保険の適用を先に確認する
「全損」「修理費用全額負担」を求められた場合
- 保険加入状況の確認(リース契約に車両保険が含まれているか)
- 修理見積もりの入手と、独立した修理業者への相見積もり
- 「通常損耗」に該当する部分の除外交渉
入車時の記録は「保険」だ
リース車の返却トラブルは、準備している側が圧倒的に有利だ。記録があれば請求を無効化できる。記録がなければ、委託会社の主張を崩せない。
入車から最初の30分間の撮影作業が、退職時の数十万円の請求リスクを消す。
本記事は情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況については、弁護士または消費者センターにご相談ください。