現実になるかもしれない話をする。
原油価格が再び上昇に転じ、補助金が終われば、ガソリンは200円に届く。2022年にはすでに170〜180円台を記録した。あと20〜30円だ。
同時に、ドライバーの高齢化と離職が加速している。2024年問題(時間外労働上限規制)で中・大型トラックドライバーの不足は表面化した。軽貨物の担い手も、じわじわと減っている。
この2つが同時に臨界点を超えたとき——物流は段階的に崩壊する。
STEP 1|燃料200円で採算ラインが崩れる
現在、軽貨物ドライバーの燃料費は月3〜5万円が相場だ(月3,000km走行・燃費12km/L・160円/Lで計算すると約4万円)。
これがガソリン200円になると、同条件で月5万円になる。
| ガソリン単価 | 月間燃料費(3,000km・12km/L) |
|---|---|
| 160円/L | 40,000円 |
| 180円/L | 45,000円 |
| 200円/L | 50,000円 |
月1万円の増加。年間12万円だ。
軽貨物ドライバーの手取り月収が25〜35万円の業界で、固定費が月1万円増えることは致命的ではない。しかし、これが単独で起きるわけではない。
STEP 2|採算割れ路線から撤退が始まる
燃料費が上がれば、採算の取れない路線から撤退するドライバーが出る。
最初に切られるのは地方・過疎エリアの配送だ。理由は単純だ。
- 走行距離が長い(燃料費が高い)
- 配達件数が少ない(1件あたりの単価が稼げない)
- 再配達が多い(高齢者・不在が多い)
都市部なら1日60〜80件こなせるコースが、地方では20〜30件になる。燃料費が同じでも、売上は半分以下だ。ここに200円ガソリンが重なれば、赤字になる。
STEP 3|ドライバー不足が撤退に拍車をかける
採算割れで辞めるドライバーが増える。残ったドライバーは過酷な条件でも続けざるを得ない。するとそのドライバーも燃え尽きて辞める。
2030年には日本のトラックドライバーが約24万人不足するという試算がある(国土交通省)。軽貨物を含む「小口配送」の担い手不足は、大型以上に深刻になる可能性がある。
理由は参入障壁の低さにある。「誰でもなれる」は「誰でも辞められる」と表裏一体だ。稼げなくなれば、アルバイトに戻るか他業種に転じる。
STEP 4|地方配送が「週1〜2回」に削減される
撤退が進むと、配送インフラは維持できなくなる。
ヤマト・佐川・日本郵便のような大手でさえ、地方の採算路線の見直しを進めている。翌日配送が「3日後配送」になる地域が増える。さらに悪化すれば、週1〜2回しか配達が来ない地域が出てくる。
これはすでに一部の離島・山間部で起きている話だ。それが「普通の地方」に広がる。
STEP 5|都市集中が加速する
配送が来ない地域では、住民が動くしかない。
- ネット通販が使えない(届かない・遅すぎる)
- 生鮮品の宅配が止まる
- 薬・医療機器の配送が滞る
こうなると、特に高齢者・車を持たない層にとって地方での生活は困難になる。人口流出が加速し、都市集中が進む。
物流が消えた地域には人も残れない。
STEP 6|物流が再編される
崩壊の後には再編が来る。
現在の「各社がバラバラに配送する」モデルは終わる。代わりに起きることは3つだ。
① 共同配送の普及
ヤマト・佐川・郵便が地方エリアで荷物を「一緒に運ぶ」。競合他社の荷物を混載することで、1件あたりのコストを下げる。すでに一部地域で実証実験が始まっている。
② 拠点集約とラストワンマイルの外部委託
大手が地方拠点を閉め、配送の最後の区間(ラストワンマイル)を地元の個人事業主・軽貨物ドライバーに委託する。これは現在も起きているが、さらに強まる。
③ 自動化・無人化の導入加速
ドローン・自動運転配送・置き配の標準化が政策的に後押しされる。人が足りないから、機械で代替する。
軽貨物ドライバーへの示唆
このシナリオが全部現実になるとは限らない。しかし、方向性は決まっている。
生き残るドライバーの条件はシンプルだ。
- 都市部・採算エリアのコースを持つ。地方路線への依存は高リスクになる。
- 複数の委託先を持つ。1社依存は、その会社が路線撤退したとき終わる。
- 再編の波に乗る。共同配送・新規委託の流れに早く入った者が残る。
物流の再編は、生き残る個人事業主にとっては「需要が集中する」チャンスでもある。
崩壊のシナリオを知っておくことは、その先にある機会を掴むための準備だ。