軽貨物ドライバーは、会社員と違って税金を自分で計算し、自分で申告する。誰も代わりにやってくれない。
構造は単純だ。1年の売上から経費を引いて所得を出し、そこから基礎控除などの所得控除を引いた残りに税金がかかる。この記事で、必要な人・しないと起きること・具体的な手順を順に整理する。
確定申告が必要なのは誰か——いくらから
国税庁の基準では、その年の所得金額の合計が、基礎控除などの所得控除の合計を超え、計算した所得税額が出る人は確定申告が必要だ。
基礎控除の額は、ここ2年で大きく変わった。
- 令和7年(2025年)分:合計所得金額に応じて58万〜95万円(改正前は一律48万円)
- 令和8年(2026年)分:さらに引き上げられ、合計所得金額489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円
「48万円を超えたら申告」という古い目安は、もう当てはまらない。ただし、専業で軽貨物を走っていれば、売上から経費を引いた事業所得が控除の合計を上回ることが多い。専業ドライバーは原則として申告が必要になると考えておいていい。 副業で売上が小さい人などの最終的な要否は、自分の所得と控除の額で確認してほしい。
会社員の副業でよく聞く「20万円以下は申告不要」は、給与を1か所から受けて年末調整を済ませている人の所得税の話だ。専業ドライバーには当てはまらない。また、所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別に必要になる場合がある。
「しない」とどうなる——無申告加算税と延滞税
申告しなければ、税金が消えるのではなく、増える。
申告期限を過ぎて税務署に指摘されると、本来の税額に「無申告加算税」が上乗せされる。税率は納める税額に応じて上がっていく。
| 納税額の区分 | 無申告加算税の率 |
|---|---|
| 50万円まで | 15% |
| 50万〜300万円 | 20% |
| 300万円超 | 30% |
これに加えて、納付が遅れた日数分の「延滞税」もかかる。過去5年以内に無申告加算税などを課されたことがあれば、さらに10%重くなる。
一方で、税務調査の通知を受ける前に自分から期限後申告をすれば、加算税は軽減される。バレる前に出せば軽い、が正しい理解だ。
白色申告と青色申告——65万円控除の分かれ目
申告には白色と青色がある。青色は事前に「青色申告承認申請書」を出しておく必要があるが、その手間に見合う特典がある。最大65万円の所得控除だ。
控除額は記帳の仕方と申告方法で決まる(令和8年分まで)。
| 種類 | 控除額 | 条件 |
|---|---|---|
| 白色 | なし | 事前申請不要・簡易な記帳 |
| 青色(10万円) | 10万円 | 簡易簿記 |
| 青色(55万円) | 55万円 | 複式簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+期限内申告 |
| 青色(65万円) | 65万円 | 上記+e-Taxでの電子申告(または優良な電子帳簿保存) |
令和9年(2027年)分からは区分が変わる。 書面申告の55万円控除はなくなり(書面の上限は10万円)、複式簿記+e-Taxで65万円、さらに優良な電子帳簿の保存などの要件を満たせば75万円になる。前々年の事業の収入が1,000万円を超える人は、簡易簿記の10万円控除も使えなくなる。
会計ソフトを使えば、複式簿記もe-Tax送信もこなせる。軽貨物のように経費が読みやすい業種で、この控除を捨てるのはもったいない。
青色申告承認申請の期限は、青色申告をしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内)。開業届と一緒に出しておくのが確実だ。
確定申告のやり方——4ステップ
やることを分解すれば4つだ。
- 1年分(1〜12月)の売上と経費を集計する
- 帳簿と決算書(青色申告決算書または収支内訳書)を作る
- 確定申告書を作成する(会計ソフトか国税庁の確定申告書等作成コーナー)
- 原則として翌年2月16日〜3月15日に提出し、納税する
いちばん重くなるのは1と2だ。だからこそ、経費は日々記録しておく。何を経費にできるかは軽貨物で経費にできるもの一覧にまとめた。
インボイス登録は必要か
基準期間(原則2年前)の課税売上高が1,000万円以下なら消費税の免税事業者でいられるが、インボイス登録をすると課税事業者になり、消費税の申告も加わる。
判断の軸は、取引先が「仕入税額控除のために登録番号を求めてくるか」だ。登録していないと報酬を減らす、契約を切る、という話になる委託会社もある。
登録した場合の負担は、特例の期限で段階的に上がる。
- 2割特例(納付額=売上税額の2割):令和8年9月30日を含む課税期間まで。個人なら2026年分まで
- 3割特例(納付額=売上税額の3割):個人事業者が令和9年分・令和10年分に使える(令和8年度税制改正で創設)
- その後は簡易課税(運送業はみなし仕入率50%)か一般課税
売上別の金額はインボイス登録で軽貨物ドライバーの消費税はいくらになるかで計算しているので、登録を決める前に読んでほしい。
まず何から始めるか
今日からやるべきは、記録の習慣だ。売上と経費を、月ごとに残す。会計ソフトにカードを連携すれば、集計は自動で進む。
そして、青色申告承認申請をまだ出していないなら、期限を確認して出す。控除は、承認を受けていない年の分を後から遡って取ることはできない。
申告で手元にいくら残るのかは、手取り診断で先に確かめておける。日当と経費を入れれば、手取りの目安と時給換算が出る。
この記事の内容を、自分の手でやるのがしんどい人へ。 明細の解読・帳簿づけ・年間集計・控除チェック・e-Taxの壁打ちまで、AIにコピペで丸投げする手順書を出した。プロンプト25本+記帳テンプレ付き。
出典:国税庁 No.2020 確定申告が必要な方/国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について/国税庁 令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(基礎控除の引上げ)/国税庁 令和9年分からの青色申告特別控除/国税庁 A1-8 所得税の青色申告承認申請手続/国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス関係)/財務省 加算税制度の概要