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経営

軽貨物委託会社の利益を守る経営指標。コストが利益を食い尽くす構造と、元請け依存の抜け方

売上が増えているのに手元にお金が残らない——軽貨物委託会社の経営者が陥りやすいこの状態には、構造的な原因がある。燃料・保険・事故・採用・中間マージンが利益を圧迫する仕組みと、元請け1社依存が価格交渉力を奪う構造を試算で整理し、毎月見るべき指標と脱依存の手順を解説する。

2026年3月17日 最終更新 2026年9月17日

売上は増えた。台数も増えた。なのに、手元に残るお金が増えていない。

これは個々の会社だけの話ではない。東京商工リサーチの調査では、2023年の貨物軽自動車運送業の倒産は49件、休廃業・解散は74件で、合計123件と3年連続で過去最多を更新した。同じ調査で、比較可能な269社の売上高は2019年比で21.0%増えた一方、利益は36.1%減っている。売上が伸びても利益が残らない構造が、業界全体に広がっている。


利益を食い尽くす5つのコスト

コスト1:燃料費

燃料費は本来「変動費」だが、稼働台数が決まっている以上、実態は毎月ほぼ固定で出ていく。

ガソリン¥190/L・月22日・1日100km・燃費12km/Lで計算すると、1台あたり月約¥34,800(試算)。10台なら月約¥348,000になる。燃料サーチャージを単価に反映できていなければ、ガソリン価格の上昇はそのまま利益の圧縮になる。

コスト2:保険料

業務用の自動車保険は、等級・車両・補償内容で大きく変わる。1台年¥150,000と置けば、10台で年¥1,500,000(筆者試算)。事故で保険を使えば、翌年以降の等級が下がり保険料が上がる。

コスト3:事故コスト

軽微な接触事故でも、保険を使えば等級ダウンと翌年以降の保険料増、使わなければ修理費の自己負担が出る。どちらでも、車両が止まる期間の売上が消える。件数を把握していない会社ほど、このコストは各費目に散らばって見えなくなる。

コスト4:採用・離職コスト

ドライバー1人が短期で辞めると、求人広告費・面接の手間・研修・欠員期間の機会損失が発生する。当サイトの試算では1人あたり¥145,000〜¥320,000(内訳はドライバー定着の記事)。年5人が入れ替われば、年¥725,000〜¥1,600,000(筆者試算)になる。

コスト5:中間マージンによる単価の天井

元請けから仕事を受ける限り、受取単価には上限がある。荷主の発注額が1日¥20,000、二次委託として受け取る額が¥16,000とすると(筆者試算)、差の¥4,000はどれだけ効率化しても取り戻せない。

1台・月20日稼働
  荷主直取引  ¥20,000 × 20日 = ¥400,000/月
  二次委託    ¥16,000 × 20日 = ¥320,000/月
  差額        ¥80,000/月(試算)

元請け1社依存が「断れない会社」をつくる

コスト5と裏表の関係にあるのが、売上の大半を1社の元請けに頼る構造だ。

単価交渉ができなくなる

交渉の前提は「断れること」だ。売上の大半を占める相手に「単価を上げてほしい」とは言いにくい。燃料費・保険料・人件費が上がっても単価が据え置かれる——これが「売上は増えても手残りが薄い」状態を固定する。

繁閑の波を丸ごと受ける

元請けの繁閑は、そのまま自社の仕事量になる。仕事が減った月も、車両リースや保険は毎月出ていく。取引先が複数あれば、繁閑のタイミングをある程度ずらせる。

打ち切りが来た月に売上が消える

元請けの方針変更・事業縮小・契約見直しは、こちらの都合とは関係なく来る。依存度が高いほど、打ち切りの翌月から固定費を払う原資がなくなる。

依存度とリスクの関係を目安として整理すると、次のようになる。

最大取引先の売上構成比リスクの目安打ち切り時に残る売上
30%未満低7割以上
30〜50%中5〜7割
50〜80%高2〜5割
80%超極めて高2割未満

※区分とリスク評価は筆者による目安。何か月耐えられるかは、固定費と手元資金によって会社ごとに大きく変わる。自社の「手元資金 ÷(固定費 − 残る売上の粗利)」で一度計算しておくとよい。


経営者が毎月見るべき指標

利益を守るには、月次で追う数字を先に決める。

指標計算式
1台あたり粗利(月収入 − 燃料・保険・リース)÷ 台数
最大取引先の売上構成比最大取引先の売上 ÷ 総売上
直取引比率直取引の売上 ÷ 総売上
離職者数直近3か月の離職者数(入社3か月以内の離職を分けて記録)
事故件数直近3か月の事故件数と、保険使用の有無
燃料費比率月間燃料費 ÷ 月間売上

目標値は業態・荷物・エリアで変わるため、一律の基準は置かない。まず3か月分を記録し、自社の推移を見る。どのコストが膨らんでいるかは、数字を並べるまで分からない。


利益を守るための優先順位

すべてのコストを同時に削ることはできない。

1. 取引先を分散し、直取引を1件つくる

中間マージンによる単価の天井と、1社依存による交渉力の喪失は、他のコスト削減では補いきれない。既存の取引を捨てる必要はない。手順はこうだ。

  • まず元請け別の売上構成比を「A社67%・B社22%・その他11%」のように数字で出す
  • 次に、直取引を1件だけ取りにいく。1件あれば、次の営業で「既存のお客様がいます」と言える
  • 1〜2年のスパンで、最大取引先の構成比を下げていく

直取引の入口として、荷主に検索で見つけてもらうHPの考え方は直取引を獲得するためのHP戦略にまとめた。

2. 離職を減らす

採用コストは、削れる経費の中でも効果が出るのが早い。入社前に実質手取りを説明する、稼働実績に応じた単価の見直し基準を示す、事故時の会社の動き方を明文化する——これらは大きな費用をかけずに始められる。

3. 燃料費は数字を持って交渉する

単価交渉では、ガソリン価格の推移と1台あたりの走行距離・燃料費を資料にして、燃料サーチャージを求める。感覚ではなく数字で話す。


まとめ

問題解決の方向
燃料費が利益を圧迫する燃料サーチャージの交渉・ルートの見直し
事故コストが積み重なる件数の記録・事故時の対応フローの整備
採用コストが重い入社前の説明と単価設計で離職を減らす
中間マージンで単価に天井がある直取引を1件ずつ増やす
1社依存で交渉できない売上構成比を把握し、取引先を分散する

売上を増やすより先に、コスト構造と依存度を数字で見える状態にする。それが経営の出発点だ。


出典

本記事の燃料費・保険料・採用コスト・単価・依存度の区分は筆者試算です。実際の数値は地域・運用規模・契約形態によって異なります。


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解

この記事を書いた人

軽貨物解体真書 筆者軽貨物を約4年走った個人事業主

コロナ禍に副業で軽貨物を始めて、約4年走りました。その間に感じた面倒や違和感から、 手取り診断・ 請求書ツール・ シフト表アプリまでAIを使って自分で作りました。ドライバーの募集はしていません——だから遠慮なく書けます。

筆者について・このサイトの方針 →

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