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解剖

再配達はなぜなくならないのか。構造を解剖する

宅配便の再配達率は2025年10月時点で約8.3%。年間50億個の宅配便のうち、単純計算で数億個が再配達になっている。そのコストは誰がどう負担しているのか。荷主・EC・消費者・ドライバー・国の5層で構造を整理する。

2026年4月7日 最終更新 2026年9月17日

再配達。

インターホンを押す。出ない。不在票を入れる。もう一度行く。

個建て(1個いくら)で報酬が決まる契約では、報酬は「届けた個数」で数えられることが多い。何度走っても、届くまでは1個分にしかならない。「届けてもらって当たり前」の裏側で、誰がコストを払っているのか。なぜこの構造は変わらないのか。


数字で見る再配達の現実

国土交通省の再配達率サンプル調査の推移は次のとおりだ。

時期再配達率集計ベース
2017年10月約15.5%大手3社
2020年10月約11.4%大手3社
2023年10月約11.1%大手3社
2024年10月約10.2%大手3社
2024年10月約9.0%大手6社
2025年10月約8.3%大手6社(3社ベースでは約9.5%)

2025年から集計対象が6社に広がったため、数字は同じベースどうしで比べる必要がある。政府は2023年の「物流革新緊急パッケージ」で「2024年度に再配達率6%」を目標に掲げたが、そこには届かなかった。

2024年度の宅配便取扱個数は約50.3億個(国土交通省)。再配達率を約8〜10%とすると、年間およそ4億〜5億個が再配達になっている計算だ(筆者試算。調査は特定月のサンプルなので目安)。

国土交通省は、再配達を労働力に換算すると年間約6万人のドライバーの労働力に相当し、再配達によるCO2排出量は年間およそ25.4万トン(令和2年度の国交省試算)としている。


再配達のコストは誰が払っているか

消費者は、通常は再配達に追加料金を払わない。荷主やEC事業者も、再配達1回ごとに運賃を上乗せして払う仕組みにはなっていないことが多い。

コストは、まず宅配事業者が人件費・車両費として吸収する。その下で業務委託のドライバーが走っている場合、個建て契約なら再配達の時間と燃料は報酬に上乗せされず、ドライバーの手取りの時給を削る形で効いてくる。日当・時間制の契約なら、同じ時間で配れる個数が減るという形で、委託元の側の負担になる。

つまり「ドライバーが全額を払っている」わけではないが、個建てで走る末端ほど、再配達のコストを自分の時間で吸収しやすい構造だ。


なぜ変わらないのか ── 5層の構造

第1層:荷主が負担しない

再配達が何回発生しても、荷主の支払う運賃は通常変わらない。仕組みを変えるインセンティブが弱い。

第2層:EC事業者が「送料無料」を武器にしている

「送料無料」でも、送料そのものは誰かが払っている。出店者が運送会社に払い、その費用は商品価格に含めるか、出店者の利益を削って吸収している。

それでも「送料無料」はECの競争力になっている。送料や再配達に料金を付ければ、客が他のECに流れるおそれがある。

送料の問題は競争政策の問題でもある。楽天が2020年に出店者一律の「共通の送料込みライン」を導入しようとした際、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いで東京地裁に緊急停止命令を申し立てた(楽天が出店者の任意参加に改めたため、同年3月に取り下げ)。

第3層:消費者が「届いて当たり前」

届く裏側のコスト構造を、消費者が知る機会は少ない。

置き配、宅配ボックス、コンビニ受取、時間指定。受け取り方の選択肢は増えているが、選ばなければ再配達は減らない。

第4層:ドライバーに交渉力がない

業務委託の個人事業主で、組合もない。再配達の負担を訴えても、「嫌なら他に頼む」となりやすい。交渉力のない層にコストが寄りやすいのは、再配達に限らず軽貨物業界全体の構造だ。

第5層:国は「有料化」には踏み込んでいない

再配達問題は、2017年のヤマト運輸の「宅配クライシス」の頃から大きく議論されてきた。2023年には政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」で再配達削減が重点課題に位置づけられた。

ただ、再配達の有料化は実現していない。政策の中心は「置き配の推進」「受取拠点の拡充」「ポイント還元」といった、利用者の行動を促す方向だ。国土交通省は2030年度までに「多様な受取方法」の利用率を約25.6%(2025年2月)から50%程度に引き上げる目標も掲げている。


海外はどうしているか

海外では、ドイツのDHL「Packstation」のような宅配ロッカーや、米国のAmazon Locker、欧州の受取拠点網など、「そもそも不在で持ち戻らない」受け取り方を広げる動きがある。日本でも宅配ロッカーやコンビニ受取は増えているが、再配達を大きく減らすほど定着しているとは言いにくい。

受取インフラが、荷物の量に追いついていない。


構造をまとめる

再配達がなくならない理由は5つの層が噛み合っている。

層現状なぜ動かないか
荷主再配達で運賃は通常変わらない変えるインセンティブがない
EC事業者送料無料が競争力有料化したら客が逃げる
消費者届いて当たり前コスト構造が見えない
ドライバー個建てなら時間と燃料で吸収交渉力がない
国有料化には踏み込まず、受取方法の多様化を推進消費者の負担増は反発を招きやすい

全部繋がっている。荷主は負担しない。ECは値上げできない。消費者は知らない。ドライバーは声を上げにくい。国は有料化には踏み込まない。

で、誰が割を食っているか。配達しているやつだ。


この構造は壊れるか

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に上限がかかった。運び手は足りなくなると言われ、宅配便の個数は年50億個を超える。再配達が減らなければ、そのしわ寄せはどこかに出る。

「届いて当たり前」が物理的に成り立たなくなる日が近づいている。

構造を壊すのは、制度改正か、世論の変化か、それとも「届かない」という現実か。

少なくとも、誰かの善意では壊れない。


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出典

解

この記事を書いた人

軽貨物解体真書 筆者軽貨物を約4年走った個人事業主

コロナ禍に副業で軽貨物を始めて、約4年走りました。その間に感じた面倒や違和感から、 手取り診断・ 請求書ツール・ シフト表アプリまでAIを使って自分で作りました。ドライバーの募集はしていません——だから遠慮なく書けます。

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