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解剖

軽貨物の廃業が3年連続最多——「業界を変えます」と言った人たちが変えたもの

2023年の軽貨物運送業の倒産と休廃業・解散の合計は123件で3年連続の過去最多。多重下請けは残り、手数料の内訳は見えず、コスト上昇分の転嫁も進んでいない。1990年の物流二法でトラック業界が通った道と重ねながら、「業界を変える」という言葉と実際に動いた制度を、東京商工リサーチと国の資料で検証する。

2026年4月5日 最終更新 2026年9月17日

「軽貨物業界を変えます」

この言葉を何度見てきただろう。SNSで、セミナーの告知で、動画のサムネイルで。期待した人も多いと思う。

でも、冷静に振り返ってみてほしい。何が変わった?


多重下請け構造 ── そのまま

経済産業省・国土交通省・農林水産省の実態把握調査(令和5年4月公表、全日本トラック協会の会員事業者4,401回答)では、次のことが示された。

  • 7割の事業者が下請のトラック事業者を利用し、下請金額は受託金額のおおむね90%以上
  • 他社から運送依頼を受けることが「ある」事業者のうち、約半数がさらに他社へ委託
  • 中小零細ほど3次請け以上の割合が高く、資本金1,000万円以下の事業者では約15%が3次請け以上

これは一般貨物(緑ナンバー)への調査だが、軽貨物の委託も同じ形の構造の上にある。

制度は動いた。2025年4月に施行された改正物流関連法で、元請事業者に実運送体制管理簿の作成(真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物が対象)や、契約内容の書面化が義務づけられた。さらに2025年6月成立の「トラック適正化二法」で、元請として引き受ける場合に再委託を2回以内に制限する努力義務が定められた。

ただし努力義務だ。可視化は進むが、構造そのものがすぐ変わるわけではない。


委託手数料の不透明さ ── そのまま

問題は手数料の「率」だけではなく、内訳が見えないことだ。

国土交通省が第一種貨物利用運送事業者に行ったアンケート(令和6年9〜10月、1,094者回答。トラック運送業における多重下請構造検討会「とりまとめ」所収)では、手数料は運賃から差し引く方式が約5割で最も多く、依頼先へ手数料を明示していない事業者が6割を超えていた。回答が協力的な層に偏っている可能性は検討会自身が注記しているが、「引かれている額が見えない」構造ははっきりしている。ドライバーの側から、途中で何にいくら引かれているかを確かめる手段は乏しい。

控除の中身については電算処理費・16%控除の解剖で、報酬が途中で削られていく流れは報酬が2万円→1.6万円に減る仕組みで詳しく扱っている。


廃業 ── 3年連続で過去最多

東京商工リサーチの集計が現実を示している(出典:東京商工リサーチ「『2024年問題』直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多」)。

2023年、軽貨物運送業の倒産は49件(前年比36.1%増)、休廃業・解散は74件。合計123件で、3年連続の過去最多を更新した。

倒産49件のうち破産が46件(93.8%)、個人企業などを含む資本金1,000万円未満が45件(91.8%)、従業員5人未満が39件(79.5%)。

休廃業・解散では、業歴5年未満が40.5%を占めた。2020年は16.6%だったから、3年で倍以上に増えている。

「独立して自由に稼ごう」という言葉で入ってきた小さな事業者ほど、早く退場している。その流れは止まっていない。


コストの転嫁 ── 進んでいない

全国商工団体連合会付属中小商工業研究所の「物流2024年問題 運送事業者の実態アンケート」(2023年10〜11月実施、民主商工会会員の軽貨物運送事業者34者が回答した設問)では、燃料費・人件費の上昇分を「ほぼ転嫁できていない」「まったく転嫁できていない」が合わせて73.5%だった。回答数は少ないが、現場の実感と重なる数字だ。

国は2024年3月に標準的運賃を平均8%引き上げて告示した。2025年6月に成立したトラック適正化二法では、国が定める「適正原価」を下回る運賃での引き受けを禁じる仕組みが盛り込まれ、公布から3年以内に施行される。

ただ、告示や法律ができることと、末端の契約単価が上がることの間には、まだ距離がある。


35年前、トラック業界は同じ道を通った

軽貨物で今起きていることは、はじめての現象ではない。

1990年(平成2年)12月に施行された物流二法——貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法——で、トラック運送は規制緩和された。事業参入は「免許制」から「許可制」へ、運賃は「認可制」から「事前届出制」へ変わった。

掲げられた理屈は「競争でサービスが良くなり、価格が下がる」だった。結果、トラック運送事業者数は1990年の約4万者から、2007年には6.3万者を超えるまで増えた。仕事を取り合う競争が強まり、運賃への下押し圧力は、立場の弱い下請けとドライバーにかかっていった。今の多重下請け構造の議論は、この時代の延長線上にある。

軽貨物(貨物軽自動車運送事業)は、もともと届出制で入口が広い。ネット通販の拡大、個人配達の仕組みの広がり、コロナ禍の宅配需要、2024年問題——需要が動くたびに「今がチャンス」という呼び込みがかかり、新規参入が流れ込む。案件は増えても単価は上がらず、参入が増えるほど「代わりはいくらでもいる」という論理が強まる。1990年代のトラック業界が通った道と、形がよく似ている。

違うのは、その歴史を知っている人間が、軽貨物の現場にほとんど残っていないことだ。上で見たとおり、休廃業・解散した事業者の4割は業歴5年未満。経験が教訓になる前に、その人が業界を去っている。


「業界を変える」はポジショントークだった

「業界を変える」は、ポジションを取るための言葉になりがちだ。

本気で変えようとするなら、やることははっきりしている。荷主との契約条件に踏み込むか、行政に働きかけるか。中間マージンを可視化するか、標準的運賃の実効性を担保する仕組みを作るか。

実際に動いたのは、SNSで「変えます」と言っていた人たちの号令ではなかった。改正物流関連法、標準的運賃の改定、取適法、フリーランス法、トラック適正化二法——制度の側だ。そして制度を動かしたのは、2030年度に輸送能力が34.1%不足しうるという試算に象徴される、構造の限界だった。


人をあてにするな

行政は動き始めている。遅いし、まだ不十分だが、方向は間違っていない。

だが、誰かが「変えてくれる」のを待っていたら、その間に廃業する。休廃業・解散の4割が業歴5年未満という業界で、待つ余裕はない。

今この瞬間にできることは、派手ではない。

  • 契約条件を書面で残す(フリーランス法で、発注側には取引条件の明示義務がある)
  • 請けた単価と、差し引かれた控除を記録する
  • 不透明な手数料には説明を求める
  • 割に合わない案件を断った理由をメモしておく
  • 新しい「今がチャンス」の話に飛びつく前に、過去に何度繰り返されたパターンかを一度疑う

業界は、誰かの号令では変わらない。変わるとしたら、構造の限界と、制度と、自分の契約を自分で確かめる人の積み重ねによってだ。


出典・参照情報


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解

この記事を書いた人

軽貨物解体真書 筆者軽貨物を約4年走った個人事業主

コロナ禍に副業で軽貨物を始めて、約4年走りました。その間に感じた面倒や違和感から、 手取り診断・ 請求書ツール・ シフト表アプリまでAIを使って自分で作りました。ドライバーの募集はしていません——だから遠慮なく書けます。

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